第1章「人間は月とナトリウムの奇跡で誕生した」より、抜粋
・・・このように45億年前、できたばかりの月は、地球からみて現在の12分の1くらいの距離を回っていました。
海ができたのはこれよりも少し後のことですが、当初は潮の満引きは壮絶なものでした。
万有引力は、距離の自乗に反比例します。
ですから、距離が12分の1だと、引力は12の自乗、つまり144倍だったという計算になります。
潮の満引きを起こす原動力は月による引力ですので、誕生当初の海には、少なくとも現在の100倍以上のエネルギーで潮の満引きが行われていたはずです。
この時期、月は今の4倍の速さで地球のまわりを回っていたのですが、地球の自転も速く、6時間で一周していました。
干潮と満潮は、地球が一回り自転する間に、それぞれ2回訪れます。
つまり、当時は干潮と満潮が1時間半ごとに繰り返し訪れたわけです。
現在の地球では、海が最も荒れるのは、台風による大嵐でしょう。
しかし、当時は、月の引力で生じる潮の満引きで、こんなものとはまったく比較にならないくらい、すさまじい大嵐が常に起きていたのです。
こうして地殻は潮の流れで削られ、また大陸にまで海水が押し寄せた結果、ナトリウムが一気に海に溶け出すこととなったと考えられるのです。
このように、生命を育む塩水という海の環境は、月が地球のすぐ近くを回っていたためにもたらされたものだといえるのです。
もちろん、海が塩水にならなかったとしたら生命は進化できなかったとは言いきれません。
ただし、仮にそうだとしても、人間も含め現在の動物は、この章のはじめにお話したようにナトリウムイオンを使って神経や筋肉をコントロールしているわけですから、今の姿とはかけ離れたものになっていたはずです。・・・
第1章 「人間は月とナトリウムの奇跡で誕生した」より、抜粋
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